
問題図
黒 森野節男 九段
白 彦坂直人 九段
ではまず、一番素直な発想から。

白1とツグのは、普通の発想です。ノゾキにつがぬバカは無し、格言通りです。
黒は2とコスミます。
いたって普通の進行ですが、これでは白不満なのです。

例えばこのように受ければ、黒は1、3と無駄ないキカシになり、白の根拠を狭めつつ自身の強化に成功し、なおかつ地も先手で得しています。
これだけ効かされるのは、白としてひじょうに不愉快です。

先ほどの図は大いに不満ですので、中央へ進出する展開が考えられます。
しかし左辺で黒が先手でポイントをあげた事実は一目瞭然です。
黒はノゾいてからコスむというリズムが洒落ているのです。
感覚的に言えば、白を棒石にしてから足元をすくうような感じです。
上記の点を踏まえて、白は反発します。

実戦&解答図
白1が正解です。

実戦はこのように変化しました。
白1、黒2の交換をしてからツグことで、白は先ほどのコスミを防いでいます。
白は根拠を保ち、黒に仕事をさせていません。
黒4を打ったとしても、先ほどと違い後手になります。
プロの世界ではこの小さな太刀の競り合いが積もり積もって一局がうまれます。
彦坂先生の神経の通った繊細な一手でした。
これから強くなりたい方は、「ノゾキにつがぬバカはなし」から、ツグ前に一仕事できないか、と考えるといいかもしれませんね。